天津通信
【鍼灸マッサージ師】天津留学通信41 ~中国留学中の歯科治療~
2015年06月15日
中国・天津へ留学中の金崎さんからメッセージが届きました。
突然の歯痛に、歯科治療を受けることとなった金崎さん。中国の歯科治療の実際と体験談です!
―天津での歯科治療―
☆突然、歯の激痛☆
昨年末、突然左上奥歯が痛みだしました。冷たいそして温かい飲食物が歯に当たるとしみます。
きっと甘い物が影響したのだろう。学校近くには、ミニシュークリームやケーキ類が売っている店がいくつかあります。味はそこそこで安く、胃がもたれるような甘さが特徴です。また使用している砂糖のせいか一部の物は食後に歯の違和感を感じることがありました。
私は超が付くくらい痛がりで、怖がりです。できることなら歯医者に行きたくなかったのですが、今までの歯の痛みと違うと感じたので早急にみてもらうことにしました。
遠先生の紹介で一附医院の歯科の先生のところへ。
病院3階の受付でまず挂号guahao (診察チケット)を購入。
この挂号は各医院の等級(中国の医院では1級から3級まであり、3級が最も大きい規模の総合病院になります。)か、各医師によって診察(診てもらうだけ)の値段が異なります。(例えば普通医師で4元(約80円)、副主任医師で8元、主任医師で10元。)
診察チケットを購入し、ドキドキしながら治療室へ。
先生:「ここに寝て下さい。」
痛い歯を叩いたり、空気を吹きかけられ激痛が走ります。
その後先生は私と同じ症状の患者さんのレントゲン写真をみせてくれ、丁寧に説明してくれました。遠先生の紹介で診察受けているので、より丁寧にしてくれてるのだろうと感じました。中国ではコネがあると、スムーズにものごとをすすめることができる場合があります。
先生:「ここの歯の深い部分(神経)に問題があります。歯の神経の治療が必要となるでしょう。」
私:「治療回数は合計何回かかりますか?」「治療費は合計おいくらになりますか?」
先生「合計7回です。」「ここの治療に600元、被せに1000元・・・合計約3000元です。」
私「3000元(日本円で約6万円)ですか!?正月に日本に帰って治療したいと思います。」
先生:「いいですよ。但し問題のある奥歯で温かい物、冷たい物を食べないようにしてください。痛みが強くなるかもしれません。」
私:「はい、ありがとうございました。」
帰り道、中国での治療費の高さに驚いたのと、意外に重症だったのとで気分が落ち込みます。「日本で治療するしかないのかな・・・」
☆日本の根管治療の現状☆
今日、先生に説明を受けた歯の治療内容をインターネットで調べました。結果、根管治療が必要ということが分かりました。
根管治療とは歯の根の管(根管)の虫歯が進み、根管の中の神経まで達して痛みが強くなる状態(虫歯の深さでいうとC3,C4)で行う治療です。治療根管内の神経を取り除き、神経を取った後、根管内を消毒し、薬を詰めて細菌が入り込まないようにします。
歯の寿命にかかわる重要な治療の一つであるのに、日本では保険点数の評価がとても低い為、歯科医は1回の治療時間や診察道具が制限され、十分な治療をしようとすると経済的にマイナスになるのが現状のようです。例えばアメリカではこの治療は自費治療で、マイクロスコープ(顕微鏡)の使用を義務づけています。また治療中に根管に細菌が入らなようにラバーダム(セラバンドのようなゴム製の素材)を使用することで成功率が上がるようです。
しかし日本の歯科ではマイクロスコープの普及率が約2%であること。保険適応の治療でマイクロスコープを使用しても収入にならない為、使用する歯科医はごくわずかであること。また使い捨てのラバーダムも保険適応外の商品の為、同様とのことでした。
では、根管治療の自費の値段はというと、約6万円~10万円かかるとのこと。
私にとって「高すぎます!」しかし中国やアジア各国の歯科治療も殆ど同じ高額な治療費でした。
もし日本で保険内で根管治療をうける場合、殆どの歯科医はマイクロスコープ等を使用せず奥のはっきり見えない部分は、歯科医の経験や技術に頼るしかないとのこと。また将来的に何度も再発する可能性もあるようです。
☆中国の歯科の現状☆
中国で歯科治療をうけることは、当初想像ができませんでした。その理由として「衛生面など信用できない。」治療では「患者の痛みなど関係なくガツガツやられそうだ。」等の思い込みがありました。
しかしインターネットで中国の歯科事情を調べてみると・・・
まず日本よりも滅菌等の衛生面がちゃんとできてる記事を発見。その内容は
中国都市の歯科治療器具の滅菌実施率ほぼ100%であり、日本はというと30%であるという。それは中国では衛生当局の抜き打ち立ち入り検査があるそうで、そこでひっかかる資格取り消しなどの罰則があるからということでした。
その他天津市内の歯科医院で治療を受けた日本人のブログを読み、総合的に問題なさそうだと感じました。
☆留学生を対象とした医療保険☆
2014年から中国奨学金留学生を対象とした医療保険制度が追加されました。新設された医療保険は、病気などで中国の医院(公立の病院限定)で治療を受けた場合、総額650元以内(約13000円)は自費となり、650元を越えた額に関してはその総額の80%が保険によって返還されるというものです。
もしかしたら歯科治療も適応されるのではと考え、とりあえず天津市で有名な天津口腔医院へ行ってみることにしました。うまくいけば、自己負担が少なくて質の良い治療が受けられるかも・・・。と期待してみたりもしました。
☆南開大学附属天津口腔医院☆
学校からバスで約30分、天津中心部にある医院へ。当日は土曜日午前ということもあり、待合い室は患者さんで混雑しており座る場所がないほどです。治療室内というと特にきれいでもなく、汚いでもなく普通の感じの治療室です。この医院では初診は医師を選択できません。例えば経験豊富そうな主任医師に診てもらう場合、最短で2週間後で、副主任医師でも人気のある医師は10日後や20日後とその時期の予約の状況で異なります。
インターネットでは、各医師の顔写真とともに治療対象とする主な疾患や特徴が記載されています。こういうのは医師を選択する際役に立ちます。
診察チケットを購入してから、待つこと1時間半やっと呼ばれました。
簡単な診察そしてレントゲン検査を行いました。結果はやはり根管治療(神経の治療)が必要であることでした。この治療内容が保険対象であるかどうか、その場で看護師さんに電話できいてもらいました。
最後にかぶせる歯(銀歯など)は、自費で約1000元 (約2万円)で保険対象とならず、それ以外の治療(約2000元 約4万円)は保険対象となるとのことでした。
☆中国で治療?または日本で?☆
2つの天津の医院で診察を受けましたが、まだ迷ってました。歯の治療を天津で受けるのは勇気がいりました。(怖がりで痛がりなので・・・)
天津口腔医院ではレントゲン写真を無料でA4の紙にコピーしてくれます。
インターネットで日本の地元の歯科医を検索し、あるホームページで根管治療を専門的にやっていて、歯科相談もしてくれる先生を発見し、メールでレントゲン写真を添付し、質問することにしました。
3日後返信をいただきました。内容的にはほぼ天津の医院での診断と同じでした。しかし保険内治療では完治までに日数が多くかかるであろうとのことでした。天津で歯科治療を受けることを決断しました。丁寧に説明していただいた先生に感謝です。
改めてインターネットは、便利な道具の一つだと思いました。
☆1回目治療☆
当日、午後2時の予約時間に呼ばれました。担当医師は呂先生という30代前半のきれいな先生でした。前もって医師にマイクロスコープとラバーダムを使用して治療してもらうこと、更に1回の治療費が600元(約12000円)を越えないようにやってもらう(保険治療の規定で1回の治療で600元を越えた分は自費となるので、越えた分は次回の治療費にしてもらうよう調節してもらう)ことを約束してもらいました。こちらの要望にはちゃんと応えてくれました。
治療室内は広く約15か所の治療室にわかれ、当日担当の医師が看護師1名と一緒に治療にあたっていました。
医師:「痛みが出たら、左手をあげて下さい。」
麻酔をはじめに3か所くらいに打たれました。麻酔は昔ながらの注射式でなく、電気をつないだアメリカ製の麻酔器具で刺されても殆ど痛みを感じません。
55分後、特にこの日は問題なく1回目の治療終了。日本での歯科治療と変わりがない感じでした。終了後先生は「もしかしたら、帰宅後痛みが出るかもしれません。私の携帯番号を書いておきます。」と言っていただきました。
中国の医師は必要な場合、患者に自分の携帯電話番号を教えるようです。以前も何度かこういう光景をみたことがあります。
1回目の治療 約55分 治療費599元(約12000円)
☆2回目治療☆
1週間後、気持ちの中で少しリラックスできているような感じです。前回同様麻酔をしっかり打ってもらい、治療が開始されました。
しかし今回は違いました。先生も慣れてきたのか、途中看護師とプライベートなことを話ながら、自分の歯をゴリゴリやってます。「手元をくるわせないのか、心配で心配で。」また中国人の60代くらいの女性患者がやってきて、先生に話しかけます。「今日この後治療してくれないか?私は最近忙しいので。」等々。
歯の治療中に聞く会話は「たまったもんじゃありません!」
天津の医院では、患者さんが治療室に入ってきて医師に質問することは多々あることです。この時、針灸科での顔面神経麻痺の患者さんも、先生が刺針中に会話していると不安だろうなと考えていました。
2回目の治療 約45分 治療費 542元(約10800円)
☆そして全治療終了☆
合計4回で治療が終了いました。総額約2000元(約40000円)そのうち1350元の80%が保険で返還されました。
歯科治療をうけた感想は、治療中の先生の会話がなければその他は特に問題ありませんでした。予約を行えばほとんど待たずに治療も受けられました。歯科治療費は中国人の収入に対して、すごく高いと思いました。
街で売られているお菓子類(特に値段の安い商品)は注意が必要だと思います。日本の商品よりも歯に影響を与える成分が含まれていると想像します。中国在住の外国人にとって毎日の歯磨き等のケアは欠かせないものだと思いました。
1番目の写真は根管治療で使用するラバーダムのものです。1回(1枚)の使用でたしか20元(400円)と先生から聞きました。
2番目の写真は、天津市の病院で使用する患者自身のカルテです。縦15cm横20cmくらいで、全30ページのノートです。患者自身が病院で1元(20円)で購入し、毎回の治療に持参し各医師に当日行った治療内容等を記載してもらいます。歯科以外の科に受診する場合もこれを持参し、記載してもらいます。
無事治って良かったですね!中国留学を目指す方にとっても、参考になるレポートでした。