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天津通信

【鍼灸マッサージ師】天津留学通信45 ~臨床実習/同級生と北京で再会!~

2015年10月06日

天津に留学中の上柿さんと中後さんですが、夏休みには学校に遊びにきてくれました。
今回は上柿さんより9月のレポートをお届けします。

 

夏休みの一時帰国を経て天津での生活が再度スタートし早1ヶ月となりました。天津の爆発事故で友人から心配や安否確認のご連絡を頂戴しましたが、天津中医薬大学は事故現場から50㎞ほど離れており、爆発や爆風での一次被害はもとより、二次被害として噂の流出物質等による健康被害も私の身近なところでは現状見聞きしません。先日の報道では現場に程なく近い日系ショッピングモールが一部の営業を再開したとのことですが、最寄りの地下鉄は全線で未だ再開のめども立っておらず、また近隣住民は現在も避難状態にあるとのことで、事故の影響は色濃く復旧にはまだまだ時間がかかりそうです。

さて、今月のご報告は2つの話題でお送りします。
1つ目は、9月より病院での研修が正式に始まり、昨年度中国語を学んでいた時間もすべて中医学の臨床現場で過ごす充実した日々ですので、その様子をできる限りご紹介できればと思います。
2つ目は、美容鍼灸業界にて新進気鋭の某美人鍼灸按摩マッサージ指圧師と北京でまさかの再会を果たしましたので特別枠でお伝えします。

<臨床実習>
まず、天津中医薬大学の大学病院をご紹介します。第一附属病院は北院と南院の2か所に分かれており、専門外来室数103室、病床数2600床、外来患者数は1日平均8000人(2014年実績は年間のべ291.5万人)を記録する天津市で最も歴史のある国家最大規模の中医医療中心施設です。現在住んでおります天中賓館(後藤学園の研修旅行で天津最終日に昼食を食べるレストランのある建物)に隣接する北院は、A・B・C・D棟と大きくは4つのビルに分かれています(写真)。

天津中医薬大学第一附属病院

私は現在、国際医療リハビリテーションビルという名のC棟で実習をさせていただいています(写真)。このビルは中国鍼灸センター、中国鍼灸学会脳病科学専門委員会、中国中西医結合学会神経科専門委員会が入っており、リハビリ部門と鍼灸部門の専門外来を多く取り揃えています。

国際医療リハビリテーションビル

私の先生は、今年の7月に南院から異動して来られた付梅副主任医師です(写真)。一般的に鍼灸の治療対象疾患は内科、婦人科、男科、小児科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科などほぼ全科に渡るため、あらゆる外来患者さんが受診されますが、付先生のもとには神経内科と循環器内科疾患、たまに整形外科疾患の患者さんがいらっしゃいます。月曜から土曜のほぼ終日(8:00~12:00、14:00~16:00)診察室を開けており、6床のベッドを有しています。新患さんが比較的多く、受診者数は増える一方ですが、午前中で40名、午後も30名を超えることは今のところ一度もないので周りの診察室と比べると余裕のある状況です。

付梅先生

付先生のお人柄はホスピタリティーに溢れ、患者さんに優しく説明が丁寧で、患者さんのためなら厳しくも接します。患者さんの中には「冗談抜きで他の医師より腕が良いから来ている」とおっしゃる方もいますから、患者さんが一度ついたら離れません。
そんな付先生は私のような研修生に対しても大変温かく、日々の診療を詳しく解説なさるだけでなく、研修生それぞれの課題もご指摘くださいます。私の課題は語学(笑)なのですが、私が知らない単語をとことん説明してくださいますし、覚えるべき臨床知識を惜しげもなく披露され、有難すぎるほど親身に接してくださいます。

ちなみに、私が評価をいただいたのは鍼の技術に関してです。すなわち、刺入、手技、そして抜針です。もちろん中国の病院では鍼管を使わず鍼を片手(もしくは両手)で刺入しますし、また私は資格免許取得後どこかで働いたり訓練したりといった技術を伸ばす過程を経ずに留学しておりますので、要するに、東京衛生学園の高橋大希先生をはじめとする先生方に教え込まれた基礎技術が中国でも評価を受けたという素晴らしい事態なわけです。万歳!

話を付先生に戻しますが、付先生は診断と治療の根拠を中医学と西洋医学に基づき、客観性(科学性)を重視します。中国は統合医療とりわけ中西医結合医学の研究・臨床・教育が盛んに行われ、天津中医薬大学第一附属病院はその中枢ですので、病院で従事する先生方は最前線の臨床及び研究が求められる立場にあります。これは中医学理論上において整合性があったり当たり前に行われてきた治法・治則を科学的に解明したり、科学的尺度で再考したりすることも含みます。
その中で一つ、付先生のお話をご紹介します。治療効果の測定のひとつと言いますか、刺鍼の適正の判定は10種類ある“得気”(患者の受ける鍼感)、 “酸・麻・重・胀・疼・冷・热・窜・动・抽”から単体もしくは複数の感覚をもって鍼の効果が得られたと評価します。そして特に片麻痺等で手指拘縮のある患者さんには、当該部位に“抽・动”の鍼感を与えるために上八邪穴を用いるという、鍼感は目的でもあり手段にもなるわけです。得気とは何か、あるいは刺鍼行為の指標をどう設定するか、重要な学びです。

さて、最後に中国のことわざ「春捂秋冻」をご紹介します。意味は、“春には厚着を、秋には薄着を”ということなのですが、一見逆だと思いますよね。付先生は、「これからどんどん気温が下がっていく中で少し寒いくらいの服が良い」とおっしゃいます。すなわち、夏から秋の変わり目に急に涼しくなったからと厚着をしてしまうと、身体が寒さに慣れぬまま冬になってしまい、かえって冬場に風邪を引きやすくしてしまうというわけです。
日本もこれから涼しくなっていくと思いますので、皆様どうぞお気を付けください。

<北京での再会>
9月14日~16日に北京国際会議センターで第3回国際灸法大会が行われました。本大会は世界中医薬学会連合会艾灸保健普及委員会が主催する「正統灸法を伝承し艾灸産業の発展を推進する」ものです。
この大会に、私と同期の倉内夕さん(東京衛生2014年卒、株式会社ハリジェンヌ勤務)が演者として招待を受け、美容鍼灸に関する自社の取り組みを国際舞台で発表されました。聞くところによりますと、VIPを超える“VVIP”なる待遇(笑)を受けたようで、本人曰く「ホンマに足を踏み入れてみないと分かり得ない貴重な体験をたくさんさせて頂けました」とのことです。
仕事とは言え、倉内さんにとっては初中国だったらしく、メディアを通じて見聞きする中国と異なる面を多く体感できたのではないかと推察しています。普段ご多忙の倉内さんですし、私の方も中国にいますので、日本で会う機会はなかなかないのですが、まさかの北京で再会できた喜びで、久々に思い出話が膨らみ、また互いの現況を語り合いました。

美容鍼灸師 倉内夕

ちなみに、北京空港にいる中国人や外国人旅行者は通りすがりの倉内さんに視線がいってしまい注目を集める、そんな状況を目の当たりにしました。美容鍼灸の効果はもとより、“美容”と銘打つ業界の第一線に身を置く責任感が彼女を一層凛とさせ輝かせているのだろうと思いました。私も私のフィールドで責任を果たし輝けるよう頑張らねばと感じる、そんな良い刺激をいただきました。
上柿拓真