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天津通信

【鍼灸マッサージ師】天津留学通信48 ~日本の鍼、中国の鍼~

2016年01月07日

新年明けましておめでとうございます。天津で2回目の正月を迎えました。
中国では春節(旧正月)の方が盛大に祝われるため、1月1日は通常よりちょっとおめでたい日、程度の雰囲気しかありません。我々が実習で通っている病院も12月31日まで通常に診療が行われ、新年は1月3日(日曜日、平常時は休診)から始まります。
2016年の春節は2月8日です。昨年は2月19日だったので、新年を迎える日付が年によって変わるのは、とても不思議な感じがして、2回経験したぐらいでは到底慣れることができません。
 
2015年12月の天津、学校の様子をお届けします。
 
<臨床実習>
付梅医師のもとで実習をさせていただき、約3ヶ月が経過しました。
中国では、ほとんどの患者さんが毎日、長期に渡り治療に来るので、患者さんと自然と顔見知りになり、世間話をすることも増えてきました。付医師は前回の報告でも書かせて頂きましたが、画像や検査数値などの西洋的な側面と、問診、脈診、舌診などの中医的な側面の両方から治療を行います。もちろん鍼の技術も確かな先生なので、新規の患者さんも増え、時には6床のベッドが足りなくなり、他の診療室にベッドを借りることもあります。
 
そのような確かな治療の御蔭でよくなった患者さんも多く、中国語で「錦旗」という優勝旗のようなものを持って来てくださる患者さんもいます。これは研修旅行などで、見た方も多いかと思いますが、患者さんが先生に対して感謝の気持ちを表すものです。

天津留学通信-錦旗

これを殆どの医師は自分の治療室に飾っています。もちろん第一付属病院に診療室を持っていること自体が、その医師の優秀さを表しているのですが、この「錦旗」の数は患者さんが、よりよい医師を見分ける指標のようなものにもなっているのかも知れません。私は実際に治療をしているわけではありませんが、付医師の診療室の学生として、患者さんの病気がよくなり「錦旗」を持って来てくださるのはとても嬉しいことです。
 
さて、初診の患者さんに付医師がまず指示することが、実は血圧を測ることです。付医師は電動の血圧計をあまり信用していないようで、指示を受けて我々が手動の血圧計で測定をします。鍼の診療室なのに、なぜ血圧なのだろう、と最初は疑問に思っていたのですが、患者さんの中には、衛生学園の授業では、クラスメイト同士で測定の練習をするので、体験できないような、最高血圧が200mmHg以上という患者さんや、右は正常にも関わらず、左は最高血圧が90mmHg以下という患者さんもいます。

このような患者さんには、まず血圧を下げる薬を処方したり、左右差が著しい患者さんには、危険な疾患の可能性もあるので、入院を促したりします。また、血圧を下げる経穴として人迎(ST9)も知られていますが、中医師の先生は薬も処方できるので、便利で効果的なので、薬を処方するそうです。残念ながら、我々日本の鍼灸師は、薬を処方することができませんが、今後日本で仕事をする上で、鍼をしてよい患者さんなのかを、最初にきちんと鑑別することの重要性を感じました。
 
次に病院で使用している鍼について触れたいと思います。写真は日本の授業で使われた鍼と、中国の病院で実際に使われている鍼を並べたものです。

天津留学通信-鍼5種類

①、②は、我々が学生時に衛生学園の授業でよく使っていた鍼(現在の授業では変わっているかも知れません)で、③、④、⑤が中国病院で実際に使われている鍼です。具体的には以下の通りです。
  • セイリン No.2          太さ0.18mm    鍼体の長さ40mm(和鍼)
  • カナケン ディスポ中国鍼       太さ0.2mm     鍼体の長さ40mm(日本で販売されている中国鍼)
  • 病院で使われている鍼    太さ0.25mm    鍼体の長さ40mm(細鍼)
  • 病院で使われている鍼    太さ0.30mm    鍼体の長さ40mm(普通鍼)
  • 病院で使われている鍼    太さ0.30mm    鍼体の長さ75mm(長鍼)
 
中国の鍼治療というと、太い鍼を乱雑に刺している、というイメージを持たれている方が多いのですが、実際には顔面部に打つ際や、鍼刺激に敏感な患者さんには③の細鍼を使い丁寧に打っていきますし、普通鍼を使う時も丁寧に正確な刺鍼をしているのですが、技術が高くすごいスピードで刺鍼を行っているので、乱雑に見えるだけだと思います。

天津留学通信-中国の鍼
 
最後に付医師が仰られた中で、特に印象的な言葉をご紹介したいと思います。
まず一つ目は、技術面の話で、経穴の部位を、骨に触ったり骨度を確かめたりせず、瞬時に見極められるような眼を鍛えなさい、という話で、二つ目は、ただ鍼を打つだけではなく、きちんと弁証論治をして、選穴、治療ができるだけの知識を身に付けなさい、という話です。

このようなワンランク上の鍼灸師を目指して、残りの研修を過ごしていきたいと思います。
中後政則