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天津通信

【鍼灸マッサージ師】天津留学通信57 ~アートと夜景、言葉と医学を巡るあれこれ~

2017年01月10日

 12月に入り気温の上下はさほどなく、先月末の急激な冷え込みが嘘のようです。今月はクリスマスに年越しまでイベントが盛りだくさんです。12月に入るや否や街中は一気にクリスマスムードになり、日本ほどではありませんが嫌でも予感させられるような雰囲気になっています(因みにホワイトクリスマスでした)、と思えば大手通販サイトの淘宝や京東などではすでに2017年の広告も出ているので、自身の感覚としては日本の年末の慌ただしさを感じております。

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<天津美術館>
 元々一人でどこでも行ける人間なので今月は天津の美術館で「美」を感じてきました。今回私が行った時は「冯远」というアーティストの展覧会の最中で、もっぱら美に関してはセンスのかけらもありませんのでよく分かりませんが、来歴を読む限り国内外で活躍されている水墨画を得意とする画家だそうです。

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 因みにこの地区は天津文化広場と呼ばれており、美術館だけでなく博物館、ショーも開催できる大きなホールまで同じ場所に併設されています。またすぐ近くには大きなショッピングモールもありますので朝から晩まで楽しむことが出来ます。ただ学校からバスで40分程かかるので少しだけ遠い場所にあります。一部を除き入館は無料ですので「美」を感じたい時はこの場所はお勧めです。
 美術館の入り口付近で地面に水で文字を書いていたお爺さんと一緒に写真を撮りました。

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 このお爺さん天津美術館が建設された当初からこの場所で地面に文字を書いて観光客を喜ばせているそうです。何よりそれが習慣になっているそうで、お歳はいくつか分かりませんが英語も達者に話されていました。ついでなので僕も一つ文字を書かせて頂きました。

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「ありがとう」おじちゃん曰く日本人とこんなに話したのは初めてだそうです。
 すごく嬉しい気持ちになったのでこの後一緒にラーメンを食べに行き。昔の天津の話、美術館が出来た当初の事、色々と中国に思う事(笑)まだまだ中国後が拙い自分ですがとても熱心に語ってくれました。そんなお爺さんにありがとう。また天津人の暖かさに触れた一瞬でした。

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これはどこかで見たことあるような…
よく街中の屋台で売られている「あれ」ですね。そう「糖葫芦」因みに街中で売っている原型はこんな感じです。

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 ちなみにこれは地方によって名前が違うらしく、よく私が使う言葉は糖葫芦ですが、他にも冰糖葫芦や糖球とも呼ぶそうです。元々「葫芦」とはひょうたんの意味ですので見た目からこの名前になったのだと思います。種類はサンザシやイチゴ、ミカンを串に刺して砂糖で固めたものです。因みに私は甘いものが好じゃないので一度しか食べたことがありません。

 ちょっと話が外れましたが、天津文化広場は夜になるとまた違った表情をみせます。ご覧下さいあぁ素敵。しかも繁華街から少し遠いところにありますのですごく静かです。またこの大きな池がなんとも素敵な場所を演出します。この場所、夜もお勧めします。

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<語学学習進捗>
・中国語初級クラス
 内容は既にHSK4級の内容になっています。リスニングの授業では一度しか問題文が再生されなくなりました。というのもHSK3級まではリスニングの問題文は2度再生されるのですが、4級からは1度しか再生されません。それぞれの能力についてはまだ差がありますので、先生の判断で補講を、という進行に変わりはありません。
 ここでこのHSKという試験について簡単に説明させて頂きます。HSKとは国際的に実施されている試験で、英語でいうところのTOEICに似た試験と考えて頂ければいいかと思います。私たち日本人はそもそも漢字を使っているので他国の生徒より圧倒的に理解が早いのは言うまでもありません。自身が日本にいる時だらだら勉強して3ヶ月でHSK3級、7ヶ月の時点でHSK4級を合格しているので日本人はこの試験にどれだけ強いかが理解できます。公式サイトで4級のレベルとしては「幅広い範囲にわたる話題について、中国語でコミュニケーションをすることができ、中国語を母国語とする者と流暢に話すことができる」…いや、これは自分には当てはまりませんね。笑 5級では「新聞やニュースを聞ける。映画を鑑賞できる。スピーチをする事ができる」…あと少しでそうなれるか心配です。笑
 全て300点満点で6割を満たせば合格となります。そして4級から5級、5級から6級の差は大きく、5級は作文の問題が増え、さらに6級では作文を時間内に読解し要約するという問題になります。1200—2500—5000と単語数も増えるので特に5級から6級の差は特に大きいのかと感じます。
 自身、天津に来て既に4ヶ月が経過しておりますのでリスニング能力が上がっているのは言うまでもありません。つい先日授業内でHSK5級の問題を解いたところ読解、リスニング、双方とも余裕で合格ラインに達していました。ただリスニングに関してもう少し詰めないといけない部分も多々あり、聞いた瞬間に意味を理解する程度でないと更にその上の6級に合格するのは難しいのかと思います。授業内で作文の練習を常日頃からしていますので、その他の対策は万全です。依然として6級合格まではもう少し時間を要しますが、9月までにはクリアするつもりなので、まずはHSK5級をクリア、そして夏までには6級といきたいところです。
 
・医学用語クラス
 医学用語のクラスではつい先日期末テストが行われました。少し早めの期末テストでしたが、内容は穴埋め問題、選択問題、作文でした。結果はまずまずといったところでしょう(勝手に自己採点しました)合格ラインには無論達しているので問題はありません。ですが、普段課題を提出する際にパソコンを使用しているため、漢字のど忘れが…この点は改善していかなければいけないのかなと思います。また話がHSKの試験になりますが、日本では筆記試験になりますが中国では会場に設置されているパソコンで受験が可能です。なんと漢字を忘れてしまってもピンインさえ分かれば万事OKという事になります。これは漢字の苦手な外国人にとても親切です。(笑) しかも毎月実施されているので自分のタイミングで随時受験する事が可能です。なんと素晴らしい。
 あと2つ診断学と映像学も高得点を目指して頑張りたいと思います。

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 少しだけ話しが変わりますが、実のところ初級クラスでの授業の進行速度が早すぎるせいか最近では教科書の内容と関係の無い、例えば中国の観光地、習俗、歴史などを先生が講義して下さる機会がとても多いです。歴史となると少しナイーブな問題で、私自身の経験則で言わせてもらいますと、今までの歴史学習はあくまでも暗記の域を超えておらず、その点においてこうした隣国の生徒と客観的に意見を交わす機会は留学の醍醐味でもあり、尚且つ彼ら彼女らは同じ「医」を学ぶ者としての倫理観や視点を持ち合わせていますので、相違する点がとても多く感じます。
 クラス最年長の朝鮮人の生徒と授業を一コマ使ってこの話題について長々と語り合いました(正直一コマでは足りませんでしたが)。彼は私より10歳以上も歳が離れていて、本国では一教師、一お医者様として働いています。毎朝彼と日々の病院実習や日本の事、色々な事について話をしています。そんな彼と歴史上の話をするのが私の一つの目標でもあり、これは日本に居たらまず絶対に出来ない経験で、密度の濃い時間を過ごす事ができました。彼いわく「全てが本当かどうかは自分も分からない。だけど話をしたいから君に話す」なんと…また僕のコミュニケーション能力が上がりました(泣)
 但し…そのように意見を言ってくださる方もいれば、身近に強く反日感情を抱いている方がいらっしゃるのも事実です、まあ当たり前ですが。中国に来て4ヶ月経ちましたが肌身で「反日」というものを強く感じさせられる経験も有りました、色々思うことは有りますが、これは人と関わっているからこそ初めて分かる事であり、だからと言って絶対に絶対に閉ざすことなく、これからもボジティブに人との関わりを持ちたいと思います。科学者が答えを求める事と同じように、人として過去の出来事を知り、またその真実を求めようとするのは当たり前の事なのではないのかと私は思います。そして医を学ぶものとして必然的にぶち当たるところです。
 
<病院実習>
 12月中旬、北京のとある地区に日本でいうところの有料老人ホームが建設され、その開業式に韓先生も行かれました。当たり前に知られている事ですが、中国も日本と同じように超急速に高齢化が進んでいます。私の主観ですが男の子は一人っ子が多く女の子は一人っ子ではない子が多いような気がします。まあこれも何かと理由があるみたいですが。一人っ子政策は2015年に既に廃止されていて、政府は撤廃したことにより経済的にプラスの面が増えると予測していますが、これは仮にも一夫婦が子供を増やしたいと考えたら、の話であって、中国のどのニュース記事を読んでも政策が廃止されたからといって二人目の子供を持ちたいと考えている夫婦は少なく、恐らく日本の現状と同じで金銭的余裕や生活リズムを崩したくないなどの理由から、二人目は持ちたくない或いは考えている、というところに留まっているのではないでしょうか。となると日本の後を追うかの如く少子高齢化による様々な面での影響が出てきます。そこで政府は中国高齢事業発展十二五計画、更にはその欠点を補填するように新しく中国高齢事業発展十三五計画という政策を打ち出し、高齢化における様々な問題に対して立ち向かっていこうという方針を打ち出しました。それにしてもこの政策、中国人の友達10人に聞いて10人とも知らないという現状ですので、果たして学生が高齢化に無関心なのか政府の問題なのか。まだまだ伸び代が沢山あるのだと感じます。
 この方針の内容としては、高齢者介護事業の充実を図るために医療機関及び医療機能と介護事業の結合(これは医療機関と介護サービスが異なる行政機関に属しているため)、更には医療ネットワークの充実、農村部における新型社会保険制度の設立、年金制度の改定、等々話したらキリがないのですが、この制度は2017年まで、2020年までに達成するという二段階目標が設定されています。何か似たようなものをどこかで見たことがあるような。
 北京に建設された老人ホームは、日本での認知症ケアの理念や方針、細部に至るまでとても忠実に学ばれ作られています。食事から居住空間の設備、中医学を駆使した認知症ケア等々、先に述べた政府の方針と合致している部分がとても多く、これからの中国における認知症ケアの先駆けとなる施設ではないでしょうか。そこにおいて使用されるのが韓先生の得意とする三焦鍼法の認知症治療であり、またこの三焦鍼法における鍼灸師の養成課程の共同開発に携わった先生が施設長を勤めておりますので、日本での鍼灸を用いた認知症ケアを中国で再現したような構図になります。これからその施設がどう展開していくのかがとても楽しみで仕方ありません。

 前置きが長くなりましたが、実習では変わらず刺鍼をさせて頂いております。言葉の壁が…次から次へと分からない単語は出てくる、構音障害の出ている患者さんの喋っている言葉は全然聞き取れない、韓先生が言うジョークの意味がよく分からず苦笑い…等々、中国に来て4ヶ月経っているのに(泣)と思いながら実習を重ねています。元々人の名前を覚えるのが得意な方では無かった自分ですが、最近では患者さんと病気の名前が一致するようになり(というのも配穴で病気と顔を覚えるようにしたのですが)この配穴はこれ、この経穴を加えるとどの症状があり、何に効く、どんな作用がある、これだったら記憶力の無い自分でも覚えることが出来る、という感じで患者さんの顔を覚えています。日によって配穴の位置が違うのでそうやって少しずつ何の症状が出ているのかを聴き逃しても理解する事ができています。
 今とても気になっている病気の一つが中国語で「不安腿」日本語で「むずむず脚症候群」です。日本において主にこの病気に対し第一選択として薬物療法が使用されます。何より患者さんのQOLを向上させる事が重要ですので、基本的にはドーパミン作動薬を使用し、有力説とされているドーパミン受容体の機能障害を改善させようという仕組みです。ドーパミンが鍵になっていますので、これは鍼灸治療の得意とするところですし三焦鍼法も加えることにより、その他ドーパミン機能障害が引き起こす病変でも同様の効果を期待する事が出来るのではないかと推測されます。処方については中医薬がメインで、絶大な効果を発揮するわけでもなく、かといって効果が薄いわけでもなく、まだまだこの病気に関しても分からない事だらけです。韓先生の患者さんにもこの病気の方がいらっしゃいます。治療効果についてお話をさせて頂きました、聞くところによると良くはなっているものの大きな変化はないそうです。今の外来で研修をさせて頂けるうちは、今後もじっくり経過を観察させて頂きたいと思います。

 以下の写真は、つい最近韓先生が書き上げた三焦についての論文になります。内容は…ムフフな内容ですね。常に研究と実践を繰り返している先生から学べる事は正直この2年間では物足りないと思う毎日です。

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 つい先日、韓先生の計らいで忘年会が開かれました。外来でお世話になっている、なっていた生徒が会しとても濃厚な時間を過ごしました。その際に先生が仰っていた言葉を書いて12月の報告とさせて頂きます。
「患者を診ることは生活に欠かせないもの、生活の一部でもある」
 んん、お子ちゃまな私にはまだ分からない領域です。
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田中悠理