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天津通信

【鍼灸マッサージ師】天津留学通信60 ~第一回天津日中中医学討論会・中国での食生活~

2017年05月10日

 今月も天津から田中悠理がお届けします。
 ようやく地獄のような冬から抜け出したと思ったら気付けば30度近く気温が上がる、そんな天気の天津です。
 
<日中中医学討論会>
 4月の初めに記念すべき第一回となる天津日中中医学討論会が天津で行われました。日本からは医師はじめ薬剤師や鍼灸師、出版社の方々など多数の医療関係者が参列し、こちら天津中医薬大学からも鍼灸推拿科医院長の郭義先生を初め、薬剤科の方々、国際学院の学長やその他多数中医学の発展に積極的な医療人の方々がご同席されました。

 午前は中医薬学研究、午後は鍼灸臨床研究の内容が主でした。今回の企画のプレゼンターは日本でクリニックの院長を務められている安井医師、中薬学の研究にご尽力されている小児科医の先生です。薬学についてはあまり詳しくありませんので内容は理解し兼ねますが、午前の部では日本人の薬剤師による中医薬の抽出方法、疾患に対する研究発表、そして中国人薬剤師による湯液研究、伝統的抽出方法による成分研究でした。現在中医薬の研究において出回っている論文の数では日本より中国の方が圧倒的に多いのは当たり前の事実ですが、今回のように中国の大学と学術交流を推進する事により双方の研究方法の難点や特長を互いに補填、指摘し合いながら、といった具合に共同研究を進める事が出来れば今よりも更なる発展に繋がるのは間違いありません。

 以前のブログで先輩の上垣さんが仰っていたように西洋医学的な研究の進歩が中医薬研究に及ぼす影響は多大であり、今回の日本人薬剤師の方の発表にもあったように「研究の結果が過去の文献に記載されていた作用と同等の効果を出している、それにより症状対効果という側面では実証された」と述べられているように、中医学の治療方法は不変であり続けるがゆえに常に西洋医学からの挑戦を受けているのは事実であり、また中医学という分野に課せられた永遠の課題です。今回のような中医薬研究に西洋医学的方法を組み込む考えを良しとする部分もあれば中医学独特の統計学的思考も当然ながら念頭に置かなければいけない、そもそものアプローチが違うこの二つの分野で双方の期待している結果を導くのは無論困難を極めます。病因から治療方法を導き出す西洋医学と病態から導き出す中医学、しかしここでプロセスが違うからといって同じプラットフォームにかけて研究結果を導き出すのは良くないという極めて偏った中医学的思考や、逆に中医学を頭ごなしに否定するという西洋医学的見解はナンセンスであり、医学であり科学であり続けなければいけないこの二つの分野は人の体が小宇宙だと比喩されるように、可能性は広がり続け、故に困難を極めるのだと改めて痛感しました。

 今回のシンポジウムは同じ医療という分野にカテゴライズされていながらも少々異なる二つの分野の境界線を少しでも縮めるために、「日本的」研究と「中国的」研究の差をどこまで近づける事が出来うるか、いわば伝統と進歩をどこまで柔軟に考え討論を通して結果を導く段階に進めるのか。といった事がとても重要だったわけです。個人的な意見ですがもう少しここは…であってもいいのではないか。と思う部分が多々ありました。駆け出しの治療家であり正直まだ右も左も分からないからこそ、右にも左にも上にも下にも行っていないからこそ「なぜ?」と疑問に思う部分が多く、この留学はその単純でありとても複雑なクエスチョンを明快にする事こそが目的であり、この討論会を聞いていて歯がゆい感覚を覚えたことは、いつまでも大事にするべき感覚だと思っています。

 今回このシンポジウムの開催するに当たって翻訳を担当したのは中医薬大学で日本語を勉強されている学生の皆さんでした。その学生のサポートという事で私も翻訳のお手伝いをさせて頂くことになり事前にPPTの作成や論文の翻訳作業を行いました。無論内容に目を通す必要があったため今回の討論会の発表資料を一通り拝見させて頂きました。専門用語を翻訳するのに時間を要するのはもちろんのこと、特に日本語での表現方法に難しさを感じました。ただ今回のような機会を頂けるのはとても貴重であり、間近で討論を聞き、かつ自分の疑問点や考えを直接教授に伺うことができるのは、この分野の研究を最前線でリードしている天津中医薬大学に在籍しているからこそ可能な事であり、これからもこのような機会は逃さず積極的に参加していきたいと思います。本当に貴重な経験でした。
 
天津日中中医学討論会-1

天津日中中医学討論会-2

天津日中中医学討論会-3

天津日中中医学討論会-4

天津日中中医学討論会-5

<語学学習進捗>
 今月からは講師の先生方が少しだけ変わり、また同じ班にも新しい学生が増えたのでちょっぴり雰囲気も変わり毎日楽しく勉強させて頂いています。中国のことわざや俗語、四字熟語の中には多く健康に関する言葉が多数存在しています。特に春のこの時期には厚着を、暖かくなったからといって薄着をすると体調を崩しやすい、それを形容する言葉も存在するくらいです。
  HSK5級の試験には無事に合格する事が出来ましたので、これからは6級の勉強を進めていきたいと思います。現在の課題としては考えて言葉を発するまでに時間がかかってしまうということ。単語の一つ一つを日本語から中国語にするのではなく、直感的に、リスニングと同じように単語を理解と言うよりも反復練習、習慣化する事によって反射的に言葉が出てくるとHSK6級のレベルまで到達できるのでは無いかと思います。いよいよ中国語の授業も残りわずかになりましたが、少しずつ確実に進歩していく以外に方法はありませんので、このまま継続して頑張りたいと思います。
 

<食生活>
 ここで私自身の中国での食生活について紹介させていただきます。
 こちら天津中医薬大学の学生は主に食堂で食事を済ませています。食堂では80円~300円程でご飯物、麺類、パンを購入でき、朝食や昼食、授業後などの時間帯は学生たちでごった返しています。この食堂にはそれほど行った事がなく、何故かと言うと人が多すぎるために座る場所もいちいち探さなくてはいけないし食堂で食べるくらいなら学校外のお店で食べた方が時間の節約にもなり手間が省けるからです。唯一この食堂で食べる理由があるとすればここの米线(米粉で作られた麺)を食べるために行くようなものです。朝は食堂の裏にある小さな売店で豆乳や鸡蛋饼(小麦粉で出来た餅に卵焼きを挟んだもの)

中国での食事

 これに好みの材料を入れ食べ、昼は学校の外で食事を済ませるか自炊をし、夕飯はほぼ自炊という生活を送っています。基本的には1日2食の事が多く、というのも外で食べるものは基本的に量が多く、更に麺類や米類などの炭水化物が多い上に油を沢山使っているので3食しっかりと食べていると容易に太りやすいという事、1日のどこかで自炊を挟まないと栄養のバランスが偏りがちになるという事も挙げられます。元々食べるものには独自の拘りがあったためか、そのお陰で体重の大きな増減も無く、体調も良好です。

中国では高血圧、高脂血症、高血糖の三つが「三高」と呼ばれており、日本でいうところの生活習慣病のようなものです。中国に住んで半年以上経過していますが、生活をしていて食べ物が脂っぽい、炭水化物や糖分の多い食事がたくさん、ビールが安い・白酒をよく飲む(酒飲み限定)、日本に比べて生で食べる習慣があまり無い、と言うより食材がナマ食に向いていない。という事を常々感じます。これは凄い勝手な個人的意見ですが、日本人より太ってる(お腹の出ている)人が多い気がします。もっとも、習慣が違うので天秤にかけるのはナンセンスですが、中国人からしてみれば日本の食事は味が薄めで物足りなく感じる方もいるようですし、中国にある日本料理の多くは比較的味が濃い目に作られております。いずれにしてもそれらが「三高」に関係している可能性は明快です。

 日本の農水省が3月末から上海や北京の客単価が比較的高い和食、中華、洋食、ベトナム料理などの中~高級料理店向けにパックご飯(電子レンジで温めるご飯)を提供、メニューを各店で考案してもらい2000~3000食の消費を目指す、そんなプロジェクトを進めているようです。依然として日本に対しての農産物への規制はとても厳しいようで、福島を及び関東周辺の10県からの農産物は一切の輸入が禁止されています。それらの事からまだ厳格な検疫の無い「パック食品」を輸出、販売していくことによって市場の拡大を図るようです。中国人の日本料理に対する評価は変わらず高く、国が発表している放射能の危険性という反面、全て日本製であるという安心感はどの中国人の根底にある概念であり、更にパック食品人ともなれば水ですら日本のものになるので一度ウケれば市場拡大は容易であり、金銭的な面もさることながらパックご飯の行く末は今後も注目したいところです。

 一つ中国のAPPをご紹介させて頂きます。これは私がお店を探す際に使っているAPPです
  中国のAPP-1

中国のAPP-2

中国版のぐるなびといったところでしょうか。その他にも同様のAPPはありますが、特にこのAPPに関しては情報量が多い気がします。因みにこのAPPを使うと出前もできるので、お米が余っている時などはおかずを注文してご飯と一緒に、なんて事も可能です。

 日本料理はナマ食の習慣ゆえに食材の味を基調としますが、中華料理は食材はもちろんのこと味付けに関して場所によって特徴があり、正直言って未知の料理が山ほどあります。中国料理を網羅したいところですが2年間では到底全ての料理は食べ尽くせないでしょう。旅行に行った際にはその土地土地の美味珍味を是非食したいと思います。余談ですが、「舌尖上的中国」という各地の食材や料理が動画で紹介されているWebサイトがあります。無論中国語のサイトなので全て中国語での紹介になりますが、動画形式ですので興味のある方は時間のある時にご覧になってみて下さい。

 普段自炊をする際は近くにある市場かカルフールを多く使います、多く食材を買う際に利用するのが市場で、最近は調味料の多くをタオバオという通販で購入しています。市場や露店で買う際の値札は500gあたりでの価格表示になっていて中国独特の表記方法です。日本と比べると圧倒的に物価が安いのは事実ですが、近代化による影響もあり生産者や消費者の物価指数は年々上昇を続けているのはもちろんのこと、中国語の教科書も数年前の物と比較すると物価の高騰が反映されている内容が多々あります。それと同時に中国人労働者の人件費、給料の平均値は日本だけでなく中国でも年々上昇傾向にあるらしく、人件費が安いという中国人労働者の勝手なイメージでしたが、ここ十年で徐々にベトナムやタイなどの東南アジア諸国に人件費削減の波は移動しているのは日本でも分かることだと思います。コンビニやファーストフード店等々、最近では東南アジア諸国の国の方々が多く働いているのを見かけるのはこの事からなのだと感じました。ただしこの人件費及び給料の「平均値」が相対的に人件費の上下に関わりを持ってくるとは考えにくいと思います、変わらず低所得者と高所得者層の差は激しく、その中での平均値を算出したからと言ってあてにできるとは思いません。今後も気になる中国経済です。


田中悠理