東洋医療総合学科Blog

【東洋ブログ 大希のつぶやき】体と技と心を鍛える鍼灸の授業

2024年04月23日授業の様子

東京衛生学園で3年間行われ続ける「銀鍼」の刺入練習は、続けることで、体から技そして心まで鍛えることができる。「心技体(しんぎたい)」をネットで検索すると、心と技と体の全てのバランスが整ったとき、最大限の力が発揮できるという教訓と説明されている。職業上出典が気になるのでw調べてみたら、古木源之助さんという方の『柔術独習書』(制剛堂、明治44年12月)らしい。古本で購入してみようと思ったがw残念ながら在庫が無く、国立国会図書館にあった。かの有名な嘉納治五郎先生序文を書いていた。

上の写真『柔術独習書』は「国立国会図書館デジタルコレクション」よりお借りしました。

「第二章柔術の目的」(p3)に、「第一身体の発育、第二勝負術の鍛錬(即ち護身の用)、第三精神の修養」とあり、これが「心技体」になったようだ。ちなみのこの説明には続きがあり、「以上三項の修業法は相互関連して居れるを以って単に一つの法のみを研究すべきものにあらず」とある(この後、例を出してもう少し説明は続きます)。


以前から疑問に思っていたが、「心技体」ってその習得順を考えると「体技心」ではないかと。私の柔道経験は中学と高校の体育の授業だけだが、鍼灸で学んできたこと、そしてその経験を教えるときにも「体技心」の順番になる。『柔術独習書』もその順番だ。つまり、鍼灸の場合は、体に該当するのは「手」ということになるだろう。
以下のブログで新入生がこれから鍼灸を学ぶにあたって「手」を鍛えている様子を紹介した。
【東洋ブログ 大希のつぶやき】新入生授業開始!

この「ゴルフボール回し」だが、東京衛生学園での私の教育経験では、5分間回しつづけて60回に到達しないと、その後の技術は試験合格レベルでは身に付かないようだ。つまり、鍼灸師になる為に技術を身に付けるに当たっての最低限の「手の柔軟性」「手の筋力」が備わっていない、という事になる。そうなると、どんなに本人が一生懸命に鍼と灸の練習をしても、どんなに私の指導が素晴らしくてもw身に付かない。2年生に進級できなかった人はここを疎かにして、年度末になって鍼灸の練習量を増やそうとして、結局は身に付かずに終わってしまう。つまり、「スポーツ」でいう最低限の「基礎体力」が無いってことになる。そうなると、まずは体力を付けること、「ゴルフボール回し」をすることが鍼灸上達の近道という事になるのだ。


昨日のブログでも書いたが、銀鍼を鍼管を使用せずに撚鍼法で刺す練習は「刺鍼を一定時間コントロールし続ける繊細な技量」が身に付く。学年が上がるごとに、鍼を細く、そして長くすることで難易度はまして行く。太さと長さが変っても刺鍼を繊細にコントロールし続けることで、身に付く技量がある。これは、硬くて容易に刺さる「ステンレス製」の鍼を使用していては身に付かない。多くの鍼灸学校では、そのような技術の習得を必要としてないようで、銀鍼は「触ったことがある」「刺したことがある」程度で、3年間練習し続ける学校は東京衛生くらいだろう。


「体」ができて、「技」が身に付いたつもりだが、いざ私(先生)の前でやろうとしても刺さらない。そうです、「体」があり、「技」もあるが、最後は「心」がものを言う。どれだけの鍼灸学校で、鍼灸臨床に必要な「心」を教えること、教わわることができるだろうか。

「高橋先生はなぜ鍼灸学校の先生をしているのですか」と質問されることがある。ただ「好き」だからだ。東京衛生学園で鍼灸を教えて23年目。鍼灸技術を教える仕事だけを徹底的してやってきた(他の仕事は一切してないとも言えるw)。そんな私が最近やっと気づいた、最後の「心」。いやー、「体」はともかく、「技」を教えるのに必死だったし、私程度の技量と経験では「心」なんか教えられないって思っていたけど、東京衛生の鍼灸指導は間違っていなかった。『柔術独習書』の「以上三項の修業法は相互関連していれるを以って単に一つの法のみを研究すべきものにあらず」がとても腑に落ちた今日この頃です。