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天津通信

【鍼灸マッサージ師】天津留学通信51 ~学外クリニック研修/衛生学園の同期と天津で再会!~

2016年05月06日

4月の天津は気温変化の大きい1ヶ月となりました。4月中旬には最高気温が30℃を超える日を観測し、月末には33℃を記録しました。一方、終日10℃代に留まったり、昼夜の温度差が20℃になったりする日もあります。中国の風習では旧暦4月1日(2016年5月7日)に更衣(衣替え)をするようですが、すでに半袖をタンスから引っ張り出したかと思えば翌日にはまたコートを着てという激しい寒暖差で身にこたえます。日本においては“六月無礼”と言うように、陰暦6月の暑さ厳しい時季に服装を略式にする無礼が許されると言いますが、今年の天津では是非とも“四月無礼”、まして春と秋が極端に短く極寒猛暑が1年の多くを占める事情を考慮しますと、“年がら年中無礼”が実は正しい適応法なのかも知れません(笑)。体調を崩さぬよう服装選びに注意して過ごしています。
さて、今月のレポートは話題が豊富なため、2つに絞ってお届けします。1つ目は、学外クリニックでの研修についてご紹介します。2つ目は、またしても東京衛生学園同期のお一人と天津で再会できたことに関して、殊に推拿界重鎮の某先生とともに視察にいらっしゃいましたので特別枠でお伝えします。
 
<学外研修>
 先日、付梅先生の休診日に陳玉辰先生のもとへご挨拶に行って参りました。

陳先生との記念写真。ちなみに後ろの壁には東京衛生学園教員の皆様との記念写真が飾られています!
陳先生との記念写真

陳先生は骨傷推拿の主任医師でいらっしゃり、中医臨床・研究・教育において30余年に渡りご活躍されています。第一附属病院でのご担当は、私たちが普段研修をする北院内に置かれた“国医堂”と呼ばれる特別外来(VIP部門)と南院での推拿専門外来です。特に頚椎症、腰椎椎間板ヘルニア、急性・慢性軟部組織損傷、急性腰椎捻挫、寝違え、五十肩、石灰沈着性関節炎、閉鎖骨折および脱臼、不眠症、便秘などの疾患に関する臨床実績が豊富でおられます。陳先生は独学で日本語を勉強されたそうで、我々にとっては大変うれしい日本語でのコミュニケーションもとらせていただけます。また、日本での留学経験をお持ちで、東京衛生学園で学ばれたとのことから「同窓生ですね!」と恐ろしいリップサービスをいただきますが、「兵頭明先生と良いお友達です」とお聞きするように、日本語を話される著名な医師からは兵頭先生とのご親交を耳にするのが常であり、後藤学園の卒業生というだけで中医臨床のトップランナーの先生方とお近づきになれるのが有難き実態でございます。

 陳先生は天津中医薬大学での外来のほか、学外の“硕博门诊部”というクリニックでも鍼灸推拿外来を担当されています。ぜひ勉強しにおいでと仰ってくださいまして、中後さんと私はこちらのクリニックでも研修させて頂くことになりました。“硕博门诊部”は、30年以上の臨床経験を有する各科専門医や大学教授を招聘しており、中医・西医内科をはじめ皮膚科や口腔科、小児科、リハビリテーション科、医学検査科といった中西医結合の総合診療施設です。

クリニック外観
クリニック外観

診察室内


院長は、天津中医薬大学第一附属病院の主任医師で中西医結合神経内科のエキスパート、国務院特殊津貼専家(国の特別手当を享受する専門家)でいらっしゃる趙建国教授です。このクリニックの特徴は、日本で言うところの“会員制メディカルクラブ”の側面をもっていることです。すなわち、会費を納入することで会員になり、各種メディカルサービスを享受します。予防医学に重点を置き、質の高いサービスの提供を目的とすることは日本と同じです。主だったサービスは、病気になったときの治療に優先的な配慮を受けられ、処方された中薬を無料で宅配してもらえ、クリニック主催の健康増進活動に無料で参加できることなどです。設立3年来、全国33ヶ所の省市自治区から、さらにはアメリカ、ドイツ、南アフリカなど海外から患者さんがお越しになるようです。

 さて、陳先生の臨床は、鍼灸と推拿の効能をバランスよく利用します。主だった診療内容は、頭皮針、温灸、抜罐、関節緊張緩和治療、骨傷推拿治療などです。それぞれの治療方法はもう少し細かく分類され医療保険が適用されます。すなわち、医療行為に対する対価である技術料が明確であり、どこにどのような方法を用いればどのような効果を得られるかが各々法的に承認されているということです。第一附属病院の鍼灸外来はもちろん保険が利きますが、1回分が何元という、言わば一般的な日本の鍼灸自由診療報酬に近い形ですので、こちらのクリニックのような料金体系ですと、医療行為としての厳密な方程式、つまり治療を目的とした鍼灸推拿行為の意義を一層感じられ、具体的かつ正確な学びに繋がるように思います。
ところで、この度は陳先生のもとを訪れる患者さんのお一人がご自身の治療体験を熱く語ってくださいましたので、その要旨をご紹介いたします。その患者さんは、1984年に腰椎椎間板ヘルニアを発症し、左脚を全く動かせない状態と同側下肢の痺れを来していました。入院5ヶ月間は1日1回の推拿治療を受け、退院後は外来にて週3回の治療、発症1年後には週1回まで漸減的に治療回数を減らせるほど回復していき、1年ちょっとで完治したということでした。2016年現在も一切の痛みなく、普通に歩けることへの喜びは30年経っても色褪せることなく、陳先生の妙手たるや甚だしいとのことです。特筆すべきは、手術をしていないことと、推拿のみでの治療効果であることです。実際、陳先生の治療を拝見しておりますと、教科書には載っていない経穴の活用や、陳先生独自の推拿手技や抜罐理論などが至る所に散見されます。深奥なる臨床体系を少しでも学び取れるよう、第一附属病院での実習と並行して今後も引き続き陳先生の外来に伺う予定です。


<同級生との再会>
 4月中旬、私と同期の喜友名愛美さん(東京衛生学園2014年卒、東京中医学研究所勤務)が天津にやってきました。

喜友名さんと病院内にて
喜友名さんと病院内にて

喜友名さんは卒業後、徒手治療でご活躍される一方、後藤学園中医学研究所の中医アドバンスコース(卒後研修)にて中医鍼灸術を修得、かねてより極めたいとお考えになっていた推拿学の道に進み、現在はご勤務先の所長でいらっしゃる孫維良先生に師事し、同所にて治療に携わっておいでです。孫先生は、中国天津のご出身で、天津中医薬大学第一附属病院の推拿科医師として従事された後、東京臨床中医学研究会の招きで来日し、以来30年以上日本において日中の医学交流に取り組んでいらっしゃいます。そんな孫先生が、喜友名さんを第一附属病院の視察に引率して来られたという経緯です。

孫先生との記念写真
孫先生との記念写真

喜友名さんは、推拿科の外来と病棟をはじめ、鍼灸科の診察室も見学され、中国における中医診療の日常を学ばれました。喜友名さんの視察は病院内に留まることなく、私が大変敬服したのは、大学の警備員の方に按摩をしてものの数分で打ち解けるなど、言葉の壁を超えた交流を図っていたことです。喜友名さんの人との接し方やものを学ぶ姿勢は、中国語を話さずとも患者さんや先生、街中の人々にとっては容易にくみとり得る他者への敬意と配慮、親しみやすさ、そして真摯さで満ちています。私としては喜友名さんと行動を共にする中で、人としての魅力に関する学びが大きく、随所に感銘を受ける再会となりました。
喜友名さんからは以下のような感想をいただいておりますので、最後にご紹介して今月のレポートを終えます。

「天津は、とてもエネルギッシュな人々が多く、表情豊かで、活気溢れる街だと感じました。聞くと、早く寝て早く起き、朝から公園で太極拳やダンスをし、冷たいものを好まず温まる食べ物を摂っているそうです。そして、自分の主張をまず身体いっぱいに表現して人情に厚いコミュニケーションが繰り広げられていました。だからこんなに宗気が充実し元気な声が毎日響く…。そんな天津の人々に信頼されているクラスメートの勇姿を見ることができ誇りに思いました。
また、病院においては、検査をした上での鍼灸・推拿・漢方を融合することで、より健康的で信頼のおける場所となっているのだと感じました。
この旅の機会を与えてくれた孫先生はじめ、実際の現場を見させて頂いた病院の方々、笑顔の素敵な天津の人々、通訳して頂いた中後さん上柿さんに心から感謝致します。」

 
上柿拓真