東洋医療総合学科Blog

知熱灸

2013年11月28日今日の東京衛生

知熱灸(ちねつきゅう)。
 
経絡治療の大家、井上恵理(いのうえ けいり)先生によって創案されて灸法です。
 
鍼灸師がおこなう灸というと、米粒大のもので直接皮膚表面にすることが多く、一度の行う灸の数(壮数:そうすう)は、はっきり言って経験によるものが多いです。最近、お灸ブームらしく、ドラックストアーから100円ショップでまで、お灸を販売していますが、あれは直接皮膚には触れません。だから、誰がやっても火傷(やけど)はしにくい。
 
知熱灸は、人差し指の先っちょ位の大きさの灸を直接皮膚表面にやります。そう聞くと、そんな大きさのものが皮膚表面で…火傷…とイメージしがちですが、知熱灸は、患者が熱感を訴えると同時に取り去るという方法で行われます!通常のお灸のできない部位なんかにもできますし、何よりもお灸の痕ができません。
 
米粒大のお灸の壮数は経験によるもの、と先に述べましたが、症状によってはお灸の熱を全く感じないなんてツボもあり、そんな時は熱の感じる壮数まで、50壮でも100壮でも行っていく場合があります。この熱さを感じる壮数までお灸をすることと、知熱灸の熱さを感じたら取り除くというのが混同するという意見から、その後、知熱灸は名称を『井上式知熱灸』としています。
 
まー、誰が指摘したのかは知りませんが、米粒大のお灸を熱さが感じるまで続ける灸法に名前なんてなかったんですよ。井上先生は新たな灸法を創案して、名前を付けたんですよ。なのに混同するって…。多分、学会か何かで指摘されたと思うのですが、いつの時代にも何か言ってくる人はいるもんだなーと、知熱灸の資料を見る度に思います。で、結局、世の鍼灸師が井上式知熱灸って呼んでいるかというと、呼んでません(笑)。治療家の方々は『知熱灸』って呼んでます。
 
『事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!』じゃないですが、『鍼灸は〇〇で起きてるんじゃない。臨床現場で起きてるんだ!』と言いたい(笑)
 
さて、前置きが長くなりましたが、1年生で知熱灸の実技が始まりました。ここからは、写真でご覧下さい(笑)
 
シホがジョーに知熱灸するところ。まずは手の甲で練習。
 
手元のアップ。これが知熱灸のお灸。1辺が1.5㎝位の三角錐です。
 
お線香で火を付けます!ジョー、どきどきだね(笑)
 
手元のアップ!火を付けたところ。黒いところが底辺まで広がってくると熱さを感じます。
 
さて、ジョーが熱さを訴えたのでシホが取り除こうとしますが…。
 
取り除いたものの、熱さにビビッてか灰皿の中に入らず…。これが患者さんの背中だったら…。
 
慌てて燃えているお灸を取りに(笑)。そしらた灰皿の奥へ…。今度は二人でお灸を取りに。普通、患者さんは取ってくれません…。
 
はー。…(笑)
 
気を取り直して、2つ目を開始。
 
と、まー、こうして練習して上手くなっていくんです。二人の写真を見ると笑顔ですが、実際には結構緊張してやっているんですよ。鍼灸治療では、『血』と『火』に触れることが臨床上どうしても出てきてしまいます。そんな時に、慌てずに対処する為には、『血』にも『火』にも慣れておく必要があります。慣れるというのも、練習。多く経験するしかないのです。
 
ジョーの腰に知熱灸をするシホ。緊張しながらもテキパキと。
 
実技を指導していると、どうすれば上手くなれるのか?という質問を受けます。ここをこうすれば上手くなるなんてことはすべて言っています。技術を身に付けるということは、教わったからってすぐにできるというものじゃないのです。ダイエットを始めて翌日にスリムになりますか?髪を伸ばそうとして坊主頭が翌日にロン下になりますか?。なりませんよね。でも、目では確認しずらいですが、ちゃんとダイエットをすれば翌日には前日と違う体になりますし、髪の毛も確実に伸びているんです。実技の練習もいっしょ。気付いたときには上手くなってます。このへんの事って、スポーツや武道の経験者は自然とわかっているんだよね。でも、頭デッカチの人にはなかなか理解できないようです。
 
ま、私は何度も何度も同じことを繰り返し言い続けるだけです(笑)