東洋医療総合学科Blog

中国鍼

2013年11月20日授業の様子

1年生の鍼灸基礎実技で中国鍼の刺鍼練習が始まった。
 
4月の入学から半年以上経ち、やっと和鍼(日本で一般的に使用されている鍼。銀製&ステンレス製がある)に慣れてきて、鍼師の卵ぽくなってきたところですが、また、一から基礎の再確認です。
 
写真:授業開始前のマッシー。
 
古代中国では鍼には9つの種類があり、大別すると、刺す鍼、切る鍼、刺さない鍼の3種類になります。刺す鍼の1つである、毫鍼と呼ばれるものが、現在一般的に鍼治療で使われているものになります。中国で生まれて鍼治療ですが、何千年のいう歴史の中で、今現在中国で使用されている毫鍼と日本で使用されている毫鍼は形状が違います。
 
写真:本校の体験入学会で私が使用しているスライド。3種類の鍼は、左が銀製の和鍼、中央がステンレス製の和鍼、そして右が中国鍼。鍼の取っ手(鍼柄:シンペイ といいます)の形状が違うでしょ。
 
じゃー、なんで3つの鍼を練習するのか。各鍼灸学校によって、実技のレベルや卒前の目標は様々。正直、リンゴに爪楊枝を刺す程度の技量しか身に付かない悲しい学校もありますが、東京衛生ではとにかく鍼を刺す技術を身に付けさせたいから!上手くしたいからです!
 
実はこの3種類の鍼、使用するテクニックに違いがあります。
 
鍼を刺すためには、鍼先(刺鍼方向)に向かって力を加えます。でも、たた力を加えてしまうと、人の皮膚ってのは皆さんが思っている以上に硬いので刺さりません。鍼はたわんでしまいます。このたわんだ状態は力の入れ過ぎです。鍼が一番刺さる状態は、鍼先に向かって力がめいいっぱい入っているのに、鍼がたわんでいない状態です。この状態を『(鍼の)芯を捉える』と言っています。どんな鍼でも芯を捉えさえすればいいのです。
 
この芯を捉えるのが一番容易なのがステンレス製の和鍼で、これを標準的な鍼だとします。
 
では、銀製の和鍼は何が違うのか。
 
銀製の和鍼は、ステンレスに比べて非常に柔らかい爲、少し力を入れすぎるとたわんで刺すことができません。よって、深く素早く刺すことには適していません。つまり、ゆっくりと時間をかけて鍼を刺していきますが、やわらかい鍼をゆっくり、つまり時間をかけて芯を捉え続ける困難さがあります。
 
では、中国鍼はどうか。
 
中国鍼は、ステンレス製で太いものが多く鍼もちょつとやそっとじゃー、たわみません。そこで、鍼が耐えれる(たわまない)最大限の力を鍼先にかけます。つまり、一瞬で鍼の芯を捉えます。芯を取り損なうと、刺さり方が不十分で痛い鍼に、または力が強いのに芯が捉えていないので、曲がってしまいます。
 
写真:ヒカリ。1本刺し終えたところ。「フー」って感じ(笑)
 
この、鍼の芯を長時間捉え続けるテクニックと、一瞬で鍼の芯を捉えるテクニックを身に付けると、おおよそどんな鍼でも扱えるようになってきます!。髪の毛よりも細い鍼も、爪楊枝並みに太い鍼も、バーベキューの串のような長い鍼も。ステンレス製の和鍼は、芯を長時間捉え続ける必要も、一瞬で捉える必要もないから、刺すのが楽なのよね。まー、最近の鍼灸学校では、ステンレス製の和鍼すらしっかり刺せるように教えていないところもあるけど。
 
写真:ユナ。真剣だね。カメラのほうを見てくれない(笑)
 
本校の卒業生の全てが爪楊枝並みに太い鍼を使用するわけではありません。でも、それだけの技術があって、一般的に用いられるステンレス製の和鍼を使用すると、技術にも余裕が生まれ、それは臨床の場において、ミスをなくし、正確は判断ができることにも繋がってくるのです。1本を鍼を、いっぱいいっぱいの技量で扱っているようでは、治療にはなりません。そんな状態では日に何人もの患者さんを治療するなんて無理です。こんなところにも東京衛生学園ならではの実技授業の工夫があります。
 
『グラップラー刃牙(バキ)』(板垣恵介先生:秋田書店:週刊少年チャンピオン)39巻にこんなシーンがあります。てか、バキを知らない人の為に説明すると、史上最強の男を決めるトーナメント。その大会の最年少優勝者がバキ。そして新たな大会、決勝で出会ったのは異母兄弟にあたる兄だった主人公。兄は史上最強と言われる父と戦う為に修業を積んできた。「今日強くなれるなら明日はいらない」そう思い続けてここまでやってきた。ドーピングをしてでも…。しかし、それに対して主人公のバキはこう言います。「負けない…10年以上もそう思い続けてきた。より明日強くなる為に…今日をもっと」。私自身、より明日治療が上手くなるように、今日をもっとと思い、本を読んできたし臨床をしてきたつもです。でもそれは私個人のことだけでなく、東京衛生学園専門学校の鍼灸実技教育においてもです。去年の1年生より、もっと今の1年生を上手くしたい。そう思って10年以上やってきて、今こうして3種類の毫鍼を1年生から使用する鍼の授業をしています。
 
はー、上手くなりたいなー。
 
写真:おまけ。授業終わったとこ。ユカ。後ろにいるアミちゃんに顔をビローンと(笑)。授業中と休憩中じゃ、みんな大違いだね(笑)