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【東洋ブログ 大希のつぶやき】伝統鍼灸学会に行こう!&書籍紹介③

2019年11月21日イベント

週末の日本伝統鍼灸学会、初日(23日の土曜日)のラストは、特別対談「脈診と経絡治療について」です。対談者は、なんと篠原孝市先生と浦山久嗣先生という古典研究の子弟関係で、経絡治療に関わるお二人です。


今回の学術大会の内容を検討した最初の頃、一度篠原先生へは講演の依頼をさせて頂いていたのですが残念ながら…という結果になっておりました。会議に参加して後からそれを知った私としては、その内容(引き受けて頂くことができなかった演題)ではなく、篠原先生といえばこっちでしょ!と突っ込み入れようかと思いましたもん。で、改めてお二人の「対談」を提示したところ、はたして引き受けて下さるか…となってしまい、了解が得られたらもちろんOKってことになりました。

で、まずは浦山先生にメールさせて頂き内容をお伝えしたところ、すぐにOKのお返事が。しかしメールには「篠原先生が受けて下さるかは分かりませんが…」と。

で、で、篠原先生に今回の企画、そして私の熱い思いを長文メールで送らせて頂いたのですが、すぐにお返事はなかったので、やはりダメかと思った数日後にメールが!そしてお引き受けしますの文字が!おもわずやったーですよ。ただし、条件として私が司会(座長)を行い、二人の対談がスムーズに進むようにお願いしますってことになりました。

この特別対談「脈診と経絡治療について」は、経絡治療学会ではなく、日本伝統鍼灸学会でを行うことに意味があると私は思っています。経絡治療学会はそりゃもう、経絡治療の「理論」と「技術」を伝えるべく学術大会を開催していると思うのですが、「思い」は日本伝統鍼灸学会のほうが強いのではないかなーと私は思っているからです。そもそも、経絡治療学会と東洋はり医学会という二大経絡治療学会が合わさって出来たのが日本経絡学会。そしてその会が名前を変えて今の日本伝統鍼灸学会になっていますので、いろんな意味で「理論」と「技術」だけじゃないところを私達日本伝統鍼灸学会は繋いでいるのではないかと思うのです。

さて、浦山先生の初めてお会いしたのはいつだろうか。
一番古い記憶では、地方開催の日本伝統鍼灸学会に参加した際に、外(休憩できるスぺース)で声をかけて下さり、話の流れから風邪を引いて私の脈を診て鍼をして下さいました。
仙台にお住まいの先生。出身も東北という共通点もあり、いつも大変気になる先生です。日本と中国と韓国の3か国が中心になって行われた経穴部位国際標準の爲に活動された「第2次経穴委員会」の「頭脳」として会の為に活動されておりました。実は私も途中から補充メンバーとして、大した働きもしていないのですがご一緒させて頂きました。学会などでお会いする度にいろいろなことを教えて下さり、先生の知識にはいつも驚くばかりで、近年は経絡治療学会の学会誌『経絡治療』で脈に関する連載をされており、私も愛読しておりました。そんな、先生の連載が1冊の本のまとめられて発売されたのが、ちょうど昨年の日本伝統鍼灸学会学術大会(大阪大会)でした。
『これからの「脉診」の話をしよう!!-いまを生き延びるための診断法-」浦山 玖蔵 著(たにぐち書店)

こんな私にも寄贈して下さり、私の手元には先生の脈に関する膨大な古典研究が凝縮されたこの本が、読む用と保管用(寄贈して頂いたもの)の2冊あります。


本著は、私的に大きく3つの内容に分けれると思ってます。

1つは、脉診に関する古典の研究内容。
先生の文章を拝読させて頂きいつも感じることに「親切」があります。古典の研究書って難解な漢字の集合体なので、気合を入れて読み進める必要があります(私の場合)。その時、ちょっとした漢字の読み方一つで先に進めなくなることがしばしば。例えば…『黄帝内経』に関する書物を見ていると必ず出てくるのが『素問』と『霊枢』の初出です。歴史上(文献上)最初に『素問』って名前が登場するのは『素問』そのものではなく、『素問』って本があったんだよっていう別の本の記載です。その別の本とは『甲乙経』と言うのですが、その著者が皇甫謐といいます。「こうほひつ」です。こうほひつ。さて、どこからが姓でどこからが名なの?ってなるんですよー。こういう時、今はネットもあるので調べやすいのですが、検索していると浦山先生の論文に行きつくことが多いです(中国語の検索は置いといて)。で、本書中には多くの古典文献の名前が出てきますが、名前にはルビ(ふりがな)がふってあり、年代、著者名が姓名がちゃんと分かるように書かれています。で、おおよそ難しい内容に関しては先回りして説明してあったりと、本当に「親切」な構成となっています。だからといって簡単にすらすら読める内容ではないのですが、読み手にとってとてもありがたいのです。

2つ目は、先生の経験と古典研究から生まれた「四部脉診」に関しての詳細な解説。
脈診=難しいってイメージだと思いますし、実際に簡単ではない。しかし、治療に脈診が必要ないかっていうと、そういうわけにはいかないし、やっぱり脈診は治療で使いたい。その為に日本では「六部定位脉診」と言われている脈診が経絡治療と呼ばれる治療家達によって生み出され工夫されてきましたが、それを修得しやすくしたのが、先生の「四部脉診」です。本の帯的なところには「これで誰でも簡単に経絡治療ができる」と書かれております。
これ以上は、学会での先生の「対談」を楽しみにして頂きたいと思います。

そして3つ目が、古典にみられる「臓腑」「気滞」「血瘀」など、学生さん分かりやすく言うなら『東洋医学概論』の内容である。これがまた、やはい内容です。先生の凄さを思い知ります。本書のタイトルが『これからの「脉診」の話をしよう!!-いまを生き延びるための診断法-」であることがから、脉診=経絡治療系の本、とだけ思ったら大間違いです。古典好きの方々はもちろんですが、所謂「中医学派」の先生に是非読んで頂きたいと、私なんかが言ってはただの生意気発言ですが、本当に凄いんですよ!実は背表紙の帯的なところに「現代中医学と経絡治療の統合的に向けての記念碑的著作」と書かれているのですが、その理由がよーくわかります。

さて、篠原孝市先生はと言いますと、実は私は一度もお会いしたことがないのです!会ったこともないのに長文メールで対談を依頼して…引き受けて下さって良かった。篠原先生は、現在は雑誌『医道の日本』で「臨床に生かす古典」を連載中です。現在の雑誌『医道の日本』の連載の中で一番楽しみにしているのが篠原先生の連載です。でも、まー、篠原先生と言えば何よりもまずは「オリエント出版」の膨大な古医書の解説です。伝統鍼灸を標榜する方好きな方で、オリエント出版社と篠原孝市先生の名前を知らない人はいないでしょ。あー、話が飛びまくりすが、そしてオリエント出版社さんと言えば野瀬眞社長ですよね。(今回の学術大会でもオリエント出版の展示があります!)。この方々がいらっしゃらなかったら、ここまで日本における鍼灸古典の研究は進んでないと思います。

で、で、そんな篠原先生が新刊を上梓されます!出版社は医道の日本社、で、どんな本かと言いますと『現代語訳 脈論口訣―原文・注釈・解説付き』です。なんと『脈論口訣』の現代語訳です。


タイトルから脈診書であることは分かると思いますが、曲直瀬 道三(まなせ どうさん)によって書かれた本です。道三に関しては知っている人が多いのではないでしょうか。最近だとNHK 歴史秘話ヒストリアで「戦のない世を目指して ~戦国スーパードクター 曲直瀬道三~」が2016年1月13日放送に放送されて鍼灸関係者の間でも話題になりました。そんな道三ですが、『脈論口訣』と言えばやっぱり「人迎気口診」ですけど…で、なんとこちらの本の発売日が学会初日23日(土)の「対談」の日なんです!ってことで、篠原先生もそのあたりのことにも対談中に触れられてくるのでは…と思っています。当日は4階の展示会場で手に取ることができます。医道の日本社さんも張り切っておりますので、皆さんもお楽しみに。4階の展示会場にも是非足を運んでください。

というわけで、今回で3回目の学会&書籍紹介ですが、どうでしょうか?
学会に行きたくなりませんか?まだまだ間に合います!
勉強の秋、学問の秋、連休はどっぷり鍼灸につかるために船堀に集合しましょう。
後悔したって知りませんよー。
特別対談の座長
専任教員 高橋大希