東洋医療総合学科Blog

【東洋ブログ 大希のつぶやき】鍼の学校ですから。

2024年04月22日授業の様子

鍼灸学校あるいは鍼灸マッサージ学校の授業は、国家試験の受験に必要な科目はどこの学校でも授業があります。まっ、当たりだよね。でも、厳密には使用するテキスト(教科書))や時間数が違っている。国家試験に合格する最低限の内容をひたすら暗記する学校もあれば、卒後の臨床でその知識をどのように生かせば良いのかまで教育する学校もある。で、実技にいたっては国家試験には「実技試験」がないので、各学校の「責任」で、悪い言い方をすると「おまかせ」になっている。

東京衛生学園では、3年間で3種類の鍼を使用し続けます。ひたすらに。


毫鍼(ごうしん)とは一般的な「鍼」の名称で、2000年前に書かれた鍼灸の古典『霊枢(れいすう)』には、当時使用されていた9種類の鍼が紹介されている。現代でもほとんどが使用されているが、現代医学(西洋医学)で使用されている外科の「メス」に該当するものもある。さて、毫鍼だが、中国で使用されているものと、日本で使用されているものでは形状が違う。国によって文化が違えば、それを扱う人や体質も変わってくるからだろう。日本の毫鍼は中国から伝わってきてから徐々に細くなってきた。細くなった鍼を工夫して刺すことになるのだが、その際に鍼の持ち方(刺し方)に変化が生じたり、あらたな道具が誕生したりした。

上の鍼の写真、黄色の枠の中には黄色の「チューブ」が見えますこれが日本で生まれた新たな道具「鍼管(しんかん)」でしす。鍼より少し短いこの管の中に鍼を入れて、飛び出している部分を指で弾いて入れる。「管鍼法(かんしんほう)」と言います。


しかし、細くて柔らかい鍼を刺す撚鍼法(ねんしんほう)といいう鍼管を用いない技術も存在する。写真は日本の毫鍼(銀製)を旋撚術(せんねんじゅつ)という鍼を半回転させながら刺す方法。金属の加工技術に優れた日本だから細い鍼が誕生し、その鍼を刺すための道具、そして刺し方が生まれたのだろう。


そして、中国の毫鍼。日本の鍼に比べてだいぶ太いが、その為刺し方もダイナミック。イメージとしては、爪楊枝をフルーツに勢いよく刺す感じ。上の日本の毫鍼を刺す際と鍼の持ち方が違うのがわかるだろうか。


この3種類の鍼には、鍼を刺す上で身に付けたい技術が潜んでおり、とくに撚鍼法と中国鍼(中国の毫鍼)の刺し方はそれぞれでないと身につかない。簡単に説明すると、撚鍼法は「一定時間の鍼をコントロールし続ける技量」中国鍼は「一瞬で鍼に力を加える技量」が見につく。まったくベクトルの違うこの2つの鍼の刺し方を3年間ひたすら練習することで、「はり師」として我々と同じステージに立っても恥ずかしくない技術が身につくのだ。

先の写真はこちらの二人に協力して頂きました(笑)。ありがとうユッキー、もえぴー。


さて、東京衛生学園専門学校の鍼灸実技教育は基礎に始まり基礎に終わる(基礎実技)。しかし、2年生の後半から応用実技がはじまる。この応用実技は、次の3つに大別することができす。「現代鍼灸」「中医鍼灸」「伝統鍼灸」だ。最近見た某HPでは、この3つを「日本の3大鍼灸治療法」と書いていた。

本校には以前、鍼灸学校の教員養成課程(臨床教育専攻科)がありました。この臨床教育専攻科では、当時「日本伝統鍼灸学会」の会長を務められていた島田隆司(しまだたかし)先生が、本校の前理事長らと教員になるために必要な知識として、「伝統鍼灸」(正式には日本伝統鍼灸というべき)の知識と技術を学べるように、日本伝統鍼灸学会所属の各流派の名人達が指導に来てくださっていたのですが(私も大変な影響を受けた)、その授業を東洋医療総合学科の学生さんにも実施しおたい!という思いから全国の鍼灸学校に先駆けて開始しました。本校の教員養成課程(臨床教育専攻科)の卒業生が教員をしている鍼灸学校では真似っこして似たような授業をやっているようです。良いものはどんどん真似るべきです。


しかし、鍼1本刺すにしても、先に紹介した3種類の鍼が最低限刺せないと表面的にだけ真似ているだけで、正直大事なことは何も学べていないだろう。「現代鍼灸」では日本のステンレス製の毫鍼を全身到るところに目的の角度と深さで刺せること。「中医鍼灸」では中国の毫鍼を使用することで、鍼の目的が理解できるし、「伝統鍼灸」を実践するには細くて柔らかい「日本の銀製の毫鍼」を扱える技量が必要となる。

3つの鍼灸治療法をバランスよく学ぶことは重要だが、このバランス、どの程度のバランスなのかが問題となる。広く浅く知るだけでは知ったかぶりで鍼灸学校を卒業するだけになってしまう。もし、自分が卒後に実践したい鍼灸治療法があり、それだけを徹底的に学べる学校があるならそれは素晴らしい特徴であり、そこの学校で学ぶべきだろう(ただし、そのような考えや知識をしっかり持って入学してくる人は100人に1人ですし、現在そのような鍼灸学校は私の知る限りありません)。

さて、3年間、3種類の鍼を山ほど刺す東京衛生の授業。最初は痛い思いもします。お灸だったら熱い思いもします。でも、それを経験して皆上手くなっていきます。そして、「現代鍼灸」「中医鍼灸」「日本伝統鍼灸」を学ぶことになる。さて、最後になりますが、3つを教わることはとても大事です。つまり鍼灸学校で「何を教わるか」はとても重要です。しかし、それ以上に大事なことがあります。それは「誰に教わるか」です。さて、この話は近いうちに続きをやりましょう(笑)。

日本伝統鍼灸学会の理事もしてます
専任教員 高橋大希