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天津通信

【鍼灸マッサージ師】天津通信★留学編<4> ~もうすぐ春節/大学の校舎・図書館・食堂・植物園/金匱要略・温病学

2020年01月10日

★天津での年越し★
うっかりしていて2020年になってしまいました。こちらでは、クリスマスから年末年始のあの日本の独特の高揚感はありません。なので、大晦日も、お正月もまったくいつもと変わらない日を過ごしました。
それよりも中国が向かっているのは1月から2月に迎える春節。今年は1月25日が元日になります。まちなかでは赤い提灯や「福」、「春」などの文字をかたどった切り絵の飾り付けが始まっています。
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お店に行くと、日本のお歳暮に相当する贈答品の山も見かけます。この時期ばかりは、10月の国慶節に実家に帰れなかった人も何とかして帰るため、多くのお店も1週間ほど休みになるそうです。池や運河は軒並み全面凍結していますが、街中は熱気を帯びてそわそわしています。どの範囲がどれほど休みになってしまうのか見当もつかず、3人で食べていけるのか心配です。

さて、大学も前期は1月10日で終了し、1か月の冬休みに入ります。期末ということは、当然テストがあるわけで、暗記をするために本を持ってぶつぶつとつぶやきながら廊下を行ったり来たりしている学生があちこちにいて、落ち着かない気持ちになります。

★大学の施設★
今回は大学の施設についてご紹介します。
校内は大きく東側と西側に分かれていて、東側は中国人学生の宿舎と教室、西側は留学生の宿舎と教室があります。教室はこんな感じです。
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中央には巨大な地球のオブジェと、人参(中薬の!)のオブジェ、医学史、内経、温病などの研究室棟、鍼や推拿の実技室、実験室棟などがあって、中国人学生も留学生も共に使うエリアです。
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図書館は留学生楼の隣にあり、古書の解読や修復などをする部屋もあります。この建物は仮の場所で、本格的な図書館は現在建設中です。
また、食堂は東と西に1か所ずつ、宅配便の集配所が西に1か所あります(大学に限らず、まちなかでも、こちらの宅配便は各家まで配達するのではなく、SMSでお知らせが届いたら、自分で集配所まで取りに行く方式です)。
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特徴的なのは、中薬植物園があることです。「如意薬嶺」という名前で、69,000㎡に100種類を超える薬草が植わっています。天津の環境が合わないのか、息も絶え絶えな薬草もありますが、日本では見たことがないような植物も多く、季節によって花や実をつけるので楽しめます。
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★授業で学んだこと★
選択した授業に「金匱要略」と「温病学」がありましたが、この二つの古典から学んだことが多くありました。
「金匱要略」は、前漢の時代に張仲景が記した「傷寒論」の雑病部分で、手足のしびれ、精神病、胸の痛み、産前産後の病気、間違えた処方をして悪化させた時の対処法などを含みます。
「温病学」は温邪による伝染性の急性外感熱病について研究されている学問で、主に「傷寒論」から発展したものです。代表的な疾病にインフルエンザがあります。
どちらもたくさんの病気が記載されていますが、それぞれの特徴的な症状と鑑別方法が細かく定義されていて、証に基づいて処方が決まってきます。鍼灸あん摩と同じと言えば同じですが、定義の多さ、細かさに唖然とします。
そして処方はすべて中薬。銀翹散や三仁湯など方剤がどのような治法を持っているのかも知っている必要がありますし、方剤を構成している中薬とその効果、分量まで覚えて、症状に応じて加減する必要もあります。
方剤のおもしろいところは、中薬ひとつでは出せない効果を引き出したり、強すぎる個性を緩和したり、実によくバランスが取れていることです。2000~3000年も前から存在する方剤もあって、改めて中医学の奥深さを知ることになりました。また、私たちが扱えるのは鍼灸あん摩だけですが、中医学はあくまでも方剤もセットになってひとつのものであることを強く感じました。

遣隋使、遣唐使の時代に命がけで海を渡って日本に中医学を持ち帰り、発展させてきた先人たちが、今の日本における中医学の惨状を見たら、さぞ嘆くことだろうと、後輩として申し訳ない気持ちです。ただし、中薬、方剤には治法があるため、その治法を鍼灸あん摩に当てはめれば当たらずとも遠からず?――そんなことを考えていたら、ちょうどそんなことを書いてある本を図書館で見つけたので、読んでみようと思います。
(2020年1月:玉置映理子)